暴れん坊ダックスフント物語 気になる閑話

消えた犬の王国 帰らなかった犬の王様

こんにちは!ノアです。
久々のダックス物語!

我が家にいたおぼっちゃまと
不思議な野犬のお話です。

 

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大きかったボス犬

その犬は野犬でしたが
一体何を食べていたのか、

それとも彼の体には
秋田犬、アイヌ犬など
大型犬の血が流れていたのか、

子どもの目には
驚く大きさでした。

当時私は10歳。
その犬は自分よりも
大きかったのです。

道の端に
まるで王座があるかのように
堂々と座り込み、

その目で何を見ていたのか、

ゆったりと
辺りを見回していました。

彼の周りには、
野犬がうろうろとしていましたが

大きなボス犬はもちろん
ほかの犬たちも

通りかかる人に対して
やたらと吠え付いたり

とびかかることは
けしてありませんでした。

仮にそういう動きをする
犬がいたといても、

ボス犬が低く一声
「ワォ!」と吠えると
犬はすっと引いていきました。

 

五右衛門

誰が彼に名前を付けたのか

私たち子どもはそのボス犬を
『五右衛門』と呼んでいました。

どうして五右衛門だったのかは
不明です。

私が父の転勤で
留萌市というその街に
住むようになった時には

五右衛門は当たり前のように
そこにいたのです。

危ないから
そばに近づかないようにと
親に言われていたので

近寄ることはしませんでしたが、

何が危ないの???
という感じで

その犬の集団に
恐怖を感じたことは
なかったと思います。

先ほどお話したように
その集団には

明らかなボス犬を頂点とした
ヒエラルキーと
不思議な統率が

動かないものとしてあることが
子どもにもわかりましたし、

なによりも五右衛門は
おっとりとしている
優しい犬にしか
感じられなかったのです。

今考えても
五右衛門がどうやって
犬たちの頂点に立ったのか、

犬たちの間に何が
存在していたのか
とても気になります。

残念ながら
答えは得られないのですが。

 

おぼっちゃまと五右衛門

さて、うちのおぼっちゃま

私は何度も奴の散歩で
この集団の前を通りました。

小学生の女の子と
短足チビのコンビです。

集団で襲われたら
あっという間に
餌食だったでしょう。

でも私たちはいつも平気で
彼らの前を通っていました。

それは私が何も考えずに
奴の散歩ではじめて
五右衛門王国に近づいた時

ある事件があったからです。

 

その日うちのおぼっちゃまは
数メートル先から
五右衛門王国の気配を察知、

ピタリと立ち止まると
耳を前の方に立てました。

前足を片方挙げて
(これはどうやら彼の
背伸びだったようです)

次には喉を垂直に立て
出来るだけ鼻を高くしました。

そうやって先のにおいを
かぎ取ったのだと思います。

元の体制に戻ると
今度はぐいぐい前進し始めました。

おぼっちゃまはチビでしたが
全身を使った力は強く、

短足で踏ん張ると
私の力では抑えられませんでした。

うろついていた犬が数匹
近づく私たちに目を停めました。

のんびり屋だった私も
さすがに不安に駆られたのですが

クルトは毛を逆立てはじめ
まったくひるむ様子は
見せませんでした。

制止しようとして
叫ぶ私の声は

もう奴の耳には
入っていなかったと思います。

五右衛門陣営の何匹かが
吠えながら走ってくると、

クルトも牙をむいて
大きな声で吠え始め

それでも前進することは
やめませんでした。

一番近い犬は
あと1メートルくらいのところまで
来ています。

とっさにクルトを抱き上げようとした
その時です、

ひときわ大きな声が
「ワォン!!」と
あたりに響きました。

犬たちが足を止めました。
そして次の瞬間、

なんと彼らは吠えながら
Uターンをしたのです。

見ると
いつも寝そべって

周囲を見回している五右衛門が
すっくと立ちあがって
私たちを見ているではありませんか。

獅子かと思うような
堂々とした王者の風格でした。

何十年も前の話しですから
今は夢だったのかと
思うような記憶ですが、

秋田犬のような
チャウチャウのような風貌の
五右衛門が立った姿は

凄くカッコよくて
少しも怖くなかった
気がするのです。

 

五右衛門王国のその後

それから私たちは何事もなく
そこを通過するようになりました。

私たちがそこを通る時
いつも五右衛門の周囲を
数匹の犬が取り巻いていましたが

私たちに近づいたり
吠えたりすることは
ありませんでした。

クルトも緊張する様子は
まったくなくなりました。

そんな日々は多分、
私たちが留萌に住んだ夏から
晩秋か初冬にかけての
数か月のことだったと思います。

 

五右衛門王国は
ある日突然姿を消しました。

冬に差し掛かった寒い朝に
冷たくなった五右衛門が
発見されたとか

寒くなったので
五右衛門が子分を引き連れて
暖かいところに
移動していったとか

まことしやかなうわさが
子どもたちの間で流れました。

春になっても
王国が復活しなかったところを見ると
五右衛門がいなくなったのは
確かなことだったようです。

犬のヒエラルキーは
遠い先祖のおおかみの血が
作り上げたものだったのでしょうか。

兄は男の子らしく
「うちのクルトはひるまないから
五右衛門に一目置かれていたんだ」

(つまり客分扱い?)
と言ったものですが、
真実はわかりません。

五右衛門がいつもいたところには
春に一杯のタンポポが咲きました。

クルトとそこを通ると
彼はいつも長い間
地面の匂いを嗅いでいました。

そして一緒に五右衛門の姿を
探していた私もいたのです。

 

いかがでしたか?
犬のヒエラルキー

こういう話を聞くと
犬の世界も人間の世界も

なにか似たものがあるような
そんな気がしませんか?

社会で生きるって
結局はそういうことなんだろうかと
ちょっと考えてしまいます。

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