社会は人の支え合いでできている

がんばってくれてありがとう!

投稿日:2018年11月7日 更新日:

こんにちは!ノアです。
おかあさんと男の子のお話です。

 

出会い

Sくんに初めて会った時、
彼は2歳になったばかりでした。

きょとんとした大きな目で
家に入ってきた見知らぬ私を見上げ、

Sくんの前にしゃがんで
「こんにちは」
と声をかけると
ひょこんと頭をさげてくれました。

遊んでいたおもちゃを握ったまま
私がおかあさんにすすめられて
テーブルの前に座るのを
首を回して見ていました。

お母さんと話し始めると
Sくんは握っていたおもちゃの車を放し
立ち上がって私のところに来ました。

どうするのかと思っていたら
背中の中ほどまで長さがあった
私の髪に触ったのです。

優しい触り方でした。

「だめ!」

おかあさんが慌てて止めました。

「大丈夫ですよ」

私が答えると

「すみません。そんなに長い髪の人を
見たことがないからだと思います」

おかあさんはとうとう
Sくんの手を引いて私から放しました。

たまたまお天気がいい日でした。

ベランダから差し込む日差しで

光る長い髪が不思議だったのでしょう。

子どもは意外なものに
興味を持つものなのだなと
なんだか楽しくなる出会いでした。

 

 反抗期

Sくんが間もなく3歳になるころ
おかあさんが目に見えて
疲れを漂わせるようになりました。

「なにを言っても、まずイヤ、
と言うんです」

「この間も、洗濯物をたたんでいたら
まとわりついてきて。

むこうで遊んでいなさいと言ったら
たたんだ洗濯物を、
ぐちゃぐちゃにしたんです。

カッとなって手を挙げるところでした」

おかあさんがため息交じりに話ながら
コップにジュースを入れてくれました。

それを見ていたSくん
彼には大きすぎると思われる
1リットルのジュースの紙パックを
持とうとしました。

「だめ!!」

おかあさんが止めましたが

Sくんはそのままテーブルにあった
Sくんのカップでしょうか

プラスチックのカップに
ジュースを入れようとしました。

おかあさんに止められて
意地になっていたのか

急いで入れようとして彼はカップを
ひっくりかえしてしまいました。

「だから、だめって言ったでしょう!」
少しヒステリックに叫ぶおかあさんに
あまりいい状況ではないなと思いました。

Sくんはこぼしたジュースを手のひらで
ピチャピチャとたたき始めました。

とうとうおかあさんはSくんの手の甲を
ピシャン!と手のひらでたたきました。

Sくんは泣きもしないで
おかあさんをにらみつけると
玄関から出て行きました。

「出て行きましたけれど
大丈夫ですか?」

確認するとおかあさんは
「すみません」

とテーブルのこぼれたジュースを拭きながら
疲れ切ったように言いました。

「大丈夫です。
家の前から離れることはないですから」

おかあさんは言いながら
玄関のドアを開きました。

Sくんが玄関に背中を向けて
しゃがんでいるのが見えました。

 

提案

「ひとつ試してみませんか?」

私は一連の出来事の中で
考えたことを口にしました。

「さっきの洗濯物を
たたんでいた時の話なのですが

まとわりついてきたら
あっちに行っていなさいではなく
一緒にやってくれる?
と言ってみるのはどうでしょう」

おかあさんは驚いたように私を見ました。

「もちろん、上手にはできないでしょう。
でも、できないなりにも
おかあさんに頼まれて何かをするというのは

邪魔しないであっちに行ってなさい
と言われるよりずっと
嬉しいことだと思いますよ。

ちゃんとたたまれていなくても
そんなに問題だとは思われませんけど、

もしおかあさんが気になるなら
あとでこっそりたたみなおしてもいいし。

例えばSくんの物は
今度から自分でやってみようか

と言ってみるとか。

ジュースも自分で入れてみたいというのは
悪いことではないと思います。

おかあさんが余裕を持てるなら
カップの下にトレーを置いて

自分の分は自分で入れてみる?
と聞いてみるとか。

自分がけがをしたり
人にけがをさせたり
火事を出してしまったりは困りますが、

失敗してもおかあさんがフォローできることなら
思い切ってSくんにやってもらって

Sくんにとっても自分もおかあさんの役に立つ
と思えるのは自信にも繋がりますよ」

おかあさんは私の話を聞いていました。

「ただし、無理はしないでくださいね。
気持ちに余裕が持てないと

Sくんが上手にできないことが
おかあさんの苛立ちの元に
なったりしますからね。」

おかあさんは何か考えながら
うなずいてくれました。

帰り際に
Sくんと向かい合ってしゃがみました。

「今日は帰ります。
おかあさんとお話をしている間
外で待っていてくれてありがとう」

Sくんから返事はありませんでした。

土の上に何かを描いているのですが
Sくん自身も何を描いているのか
わからないように見えました。

「また、来てもいいですか?」

聞くとSくんはぱっと立ち上がり

「いいけどぉ」

ちょっと大人びた口調で答えると
手の土をパンパンとはらいました。

 

頑張った親子

次にSくんに会ったのは
3か月後でした。

おかあさんから引っ越しをすると
連絡があったのです。

行ってみると
「再婚することになりました」
おかあさんが嬉しそうに
報告してくれました。

「Sがすっかり懐いて
おとうさんになってもらってもいいか聞いたら
いいよと言ってくれたので」

おかあさんが話しながら冷蔵庫から
ジュースのパックを出しました。

「入れる!」

Sくんがおかあさんがテーブルに置いた
ジュースのパックを小さな両手で持って

トレーに置いたプラスチックのカップに
ジュースを入れてくれました。

「おめでとうございます。
それはなによりですね。」

私は感動しました。
おかあさんの再婚にではなく
ジュースを入れてくれたSくんにです。

「それで引っ越しだったのですね。
急だったのでどうしたのかと思いました」

「彼が転勤なんです。
それで急に来週引っ越すことになって」

「来週?じゃあ、片付けが大変ですね」

「そうなんです」

おかあさんは続けました。
「邪魔してくれる人もいるしね」

ちゃめっけたっぷりで
Sくんをからかうように言いました。

私は瞬間、
あれっ?と思いました。

以前と空気が全然違うのです。

そして次のSくんの答えに
言葉をなくしました。

「じゃまじゃないよ!
ぼく、自分でできるもん!」

なんと堂々とした
誇らしげな言葉!!

そうか

Sくんもおかあさんも

あれからがんばったんだ!

すごく、すごく

がんばったんだ

そう思うと霧が晴れたように
周囲が明るくなりました。

その時、私は確信しました。
この親子なら大丈夫

何があってもきっとがんばって
乗り越えていける。

私は心から二人の幸せを
願わずにはいられませんでした。

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