社会は人の支え合いでできている

帰らない家族を待って見る夢は

投稿日:2018年10月28日 更新日:

こんにちは!ノアです。
アルコール依存症の2話目です。

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こちら からご覧ください。

 

 病識

アルコール依存症は病気です。

 

アルコールをやめて何年経とうと、
もうそろそろ飲んでも大丈夫
ということはほとんどないようです。

 

ですから自分がアルコールを口にすると
飲む量のコントロールができなくなる病気で

それはほとんど不治の病だと
認識できることがとても大事です。

 

Ⅼさん

私が初めて会った時
Lさんは30代半ばでした。

 

30代半ばというと
職場ではそろそろ中堅で

中心になる働き手としても
頼りにされる年齢です。

 

でも私が初めて見たLさんは
片手に日本酒の一升瓶を持ち
素足につっかけ、

いつ洗ったのかわからないジャージの上下に
いつか、どこかでころんで
土がついたままと思われる
薄いジャンバーを着ていました。

 

季節は11月。

 

場所は北海道の浜の街。

 

歩道を右にフラフラ、
左にフラフラ。

遠目で見ても足元が
定まっていないのがわかりました。

 

当時、私は福祉関係の支援者でした。

 

Lさんのところを訪問したのは
まだ若いのに
過度の飲酒のため妻子に逃げられ

お酒におぼれてふらふらしているLさんを
心配した民生委員さんに

彼に病院受診をさせられないか
という相談を受けての訪問で
Lさん自身がどうしたいのか
確認のためでした。

 

私がLさんの家を訪問したのは
彼を初めて見た数日後でした。

 

寒い日だったのですが
ストーブの燃料もなく

Lさんは先日外を歩いていた時と
同じ服装でした。

 

さすがに会話が成立しないほど
飲んではいませんでしたし

もしかすると私に会うために
朝から飲んでいなかったかもしれません。

 

「飲まないでいられますから
病気じゃないです。

15歳から飲んでいました。
朝早くに浜に出て船に乗るじゃないですか。

冬なんて朝の四時というと寒くて寒くて
まだ暗いですし身体を温めるために
一杯ひっかけて船に乗るんです。」

 

そう話したLさんの手が震えていたのは
寒さのためか
お酒が抜ける禁断症状だったのか。

 

Lさんはそうして20年間以上
飲み続けてきたわけです。

 

Lさんの後ろの壁に
子供が描いたと思われる
絵が貼ってありました。

 

クレヨンで描かれた
つたない絵には

多分、Lさんと、
出て行ったと聞いた
Lさんの奥さんと子供。

 

いつ拭いたのか
汚れの上にほこりが
こびりついたテーブル。

 

正直に言うとあまり座りたくない
汚いカーペットを敷いた床。

 

ドラマで見たような気がする光景が
リアルに目の前にありました。

 

「病院に行きませんか?」
私が聞くと

「でも病気じゃないし」
Lさんは繰り返しました。

 

「それに、閉じ込められて
縛り付けられるって聞いたし」

そりゃそうだ!
あんたは病気なんだよ!!

急性期の離脱症状があるし
そうするのはあんたを守るためだよ!!

内心で思いながら
私には言えませんでした。

 

壁の絵もLさんがここに住んでいる限り
貼られたまま色褪せるだろう
とも思いました。

 

まだ30代半ばです。
Lさん次第で壁の絵が色あせる前に

子供と再会することが
できるかもしれないのに
とも思いました。

 

でも言いませんでした。

Lさんが奥さんが思い直して
そのうち子供と帰ってくると
考えているのがわかったからです。

 

 

 

閉鎖病棟

若いころ勤めていた病院で
精神科が移転することになりました。

 

患者さんが全員、
退院するかほかの病院に転院したあと

古い病棟は壊すということから
私は閉鎖病棟を見せてもらいました。

 

古い木造校舎のような閉鎖病棟には
まず入り口にしっかりと鍵がかけられ、

そこを入ると広いデイルームと
その一角にナースステーションがありました。

 

更に奥に続く廊下の両側には
病棟が並んでいました。

 

古い病棟だったので
大部屋ばかりだったのですが、

見たところ一般的な
古い病院の大部屋病棟でした。

 

そのほかにデイルームから
少しくぼんだところがあり
そこに幾つかの隔離室が並んでいたのです。

 

どの部屋も頑丈そうな木の扉で
扉には室内の様子が見えるように
上部に覗き窓がありました。

 

覗き窓には丈夫そうな
鉄格子がはめられ

室内を見ると
窓も鉄格子が入っていました。

 

一部屋の広さは
3畳ほどだったでしょうか。

 

網走監獄博物館の
独房を思わせるような作りでした。

 

衝撃的だったのは
木の壁にたくさんの文字が
書かれてあることでした。

 

ボールペンやサインペンで書かれたもの。
なかにはどうやったのか彫り込んだものまで。

 

そのほとんどが
神に救いを求める言葉だったり
お経の一節だったり

何かを悔いる言葉だったり
悲痛な叫びの言葉が
並んでいたのです。

 

全てがアルコール依存症と戦う人の
手によるものかどうかはわかりませんが

それらはいたずら書きとか落書き
などという類のものではなく

自分の病気と
真摯に向き合った人たち
一人一人の

壮絶な戦いの軌跡でした。

 

他人の援助の限界

アルコール依存症になった人に限らず

第三者から見ると
悪い方へ悪い方へと

選択していっているとしか
思えないこともたくさんあります。

 

アルコール依存症の人も
早く病院に行って必要な治療を受け

断酒会につながればやりなおせるのに
と思う人もたくさんいます。

 

誰かが現実を相手に突き付けて
首尾よく相手に気付きがあったとして、

最終的には本人が認識した現実と戦えるか
どうかという問題が残ります。

 

戦うのは本人であり
勝ち取れるのも本人だけです。

 

私の出会ったアルコール依存症の人たちは
人間関係が破壊されてしまい

取り戻せないものが
あまりにも多い状況になって
気が付いた人が何人もいました。

 

振り返るとこの病気と闘う人達に
何を支援できたのかと
自問自答したくなります。

 

Lさんが今どこでどうしているのか、
あの壁に貼られたクレヨン画は
今も忘れられません。

この記事は【アルコール依存症】の2話目です。

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