こんにちは！ノアです。
前回に続いて「もののけ姫」です。
前回、この物語には
福祉が描かれているとお話しました。
その舞台は「タタラ場」です。
ハンセン病者の受け入れ
ハンセン病は感染症ですが
日本でも欧州でも
古くから認知されていました。
キリスト教の聖書にも
イエスキリストがその病を治した
という記述があります。
日本では
ハンセン病に感染すると
施設に入れられ
自由が奪われて
生涯をその施設で
生きることとなり
生きているにもかかわらず
亡くなった者として
戸籍から抹消された人たちも
沢山いました。
前回お話したように
初めて見た「もののけ姫」は
ストーリーについていけず
混乱のうちに
終わってしまったのですが
ハンセン病の人がタタラ場に
受け入れられている様を
描いていることは
記憶に残りました。
その中の一人がアシタカに
エボシが彼らを受け入れ
自分で彼らの体を洗い
布を巻いたと語ります。
タタラ場での物腰の柔らかい
優しい表情のエボシは
慈悲深い君主というイメージが
そこから生まれます。
皮膚症状などから
前世の悪行が今世に出現した
「業病」などとも言われた
ハンセン病ですが
このような形で
アニメに描かれたことは
驚きであり衝撃でした。
他所では人として扱われない者が
タタラ場では一人の人間として
扱われており
人としての尊厳が守られている
世界なのです。
女たち
タタラ場の女たちは
陽気で元気です。
しかし彼女たちは
売られた女たちでした。
売られた女を
エボシがみんな連れてきたのです。
売られてどこでどんな扱いを受けるのか
不安と恐怖しかない体験を経て
タタラ場に連れてこられた女たちは
そこで安心と身の安全を
与えられます。
人並みに結婚もして
所帯を持つことも
当たり前のこととして
許されていました。
人としての普通の生活は
タタラ場での労働が
重労働であったとしても
楽しく幸せなものだ
ということが
女たちの陽気さに
表現されていると思います。
ここにも物として
売り買いされた商品だった
女たちが
人として生きていける
世界である様子が
描かれています。
また本来はタタラ場の仕事は
男の仕事でした。
そればかりか女人禁制
の世界でした。
それはタタラ場の神が女性で
嫉妬するからとも
血を嫌うからとも
言われていたようです。
しかしもののけ姫の中の
タタラ場で働いているのは
全員女です。
何よりもタタラ場を仕切る
エボシが女なのです。
女が堂々と男の働きをして
収入の元を生産しています。
男たちに
自分たちが鉄を売ってこなければ
米も食べられないと言われると
その鉄は自分たち女が
作ったものだと言い返す女
そこは男と女どちらが欠けても
維持していけなくなる世界
男女で力を合わせて
作り上げている世界なのです。
エボシ
ハンセン病者を迎え入れ
売られた女を買い
この世界を維持しているのが
タタラ場のリーダーエボシです。
エボシはタタラ場の者たちに
慕われていながらも
時に部下の男を冷酷に
放置して死に追いやります。
それでもタタラ場の者たちが
エボシを慕うのは
エボシがどういう理由で
そういう判断を下すのかということを
タタラ場の住民たちが
知っているからです。
エボシは自ら戦士として
戦いに身を投じて
タタラ場を守ろうとする君主として
描かれています。
このエボシには
もののけ姫に出てこない
過去が設定されていることを
宮崎監督が語っています。
エボシはさらわれて売られた
武士の娘だったという過去です。
このように売られた娘は
地獄太夫や立烏帽子太夫と呼ばれ
エボシという名は
そこからきたものでした。
倭寇（わこう）と呼ばれた
海賊の頭目に買い取られて
妻となりましたが
次第に組織を支配するようになり
最後は夫を殺して
日本に帰ってきたという過去です。
エボシの強さは
このような彼女の過去から
生まれたものです。
エボシは横暴な独裁者にも
見えますが
実はタタラ場を理想郷にして
維持していくために
自ら戦い続けることを選んだ
戦士だということが
よく理解できますね。
「もののけ姫」の福祉
もののけ姫は
自然と人間の対立や
人間同士の権力闘争など
多様な描き方をされています。
その中の理想郷「タタラ場」
全身に包帯を巻いた人々。
ふいごを踏む
女だけの作業場
女たちが作った鉄を
命がけで売りに行く男たち
頼もしい女リーダーエボシ
そしてこの理想郷は
まさに福祉の根幹というべき
相互扶助でなりたっているのです。
いかがでしたか？
「もののけ姫」に見る福祉
一本のアニメに込められた
幾つもの思想や
作り上げられた背景
これら一つ一つが
私たちを魅了してやまない
「もののけ姫」の物語を
作り上げているのですね。
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